
1、根来塗とは
現在の和歌山県岩出市根来において制作される漆器のことで、
根来寺において鎌倉期から室町期まで僧侶の日常使いの漆器
として作られたのが始まりです。
「根来塗」は主に朱塗りの、当時貴重な天然の辰砂(しんしゃ)を使った漆器をおもに指し、朱を塗らない黒色の漆器を「黒根来」と言います。
1585年の豊臣秀吉の紀州根来攻めにより根来寺は壊滅的な打撃を受け、当時の塗りの技術は一度消えてしまいました。
この時逃げ延びた僧侶が伝えた技術が、日本三大漆器の一つとして有名な紀州漆器の起源であるとも言われています。
約四百年後である現代になって、往時の根来塗を再興しようとした美術史家の河田貞氏と根来塗塗師の池ノ上辰山氏、その尽力によって現代に復活したのです。
2007年に和歌山県の指定を受けて「根来寺根来塗」として復興登録されました。
※以下「根来塗」は池ノ上辰山氏の系譜の宗家根来寺根来塗を指します。
2、根来寺根来塗は使いやすい

・根来塗はとても丈夫
根来塗には全26工程、そのうち19工程は下地作業であり、下地こそが根来塗で最も重要視されているとも言えます。
麻布を貼ることでさらに強度を上げ、より頑強になっています。
木で出来ているので軽く、落下時の衝撃も緩和されます。
また欠けや割れに強く、通常漆器に熱湯を直接注ぐのはご法度であるが、直に注ぐこともできます。
何故か根来塗のカップを購入した人は白湯(さゆ)に目覚めることが多いらしいです(私もその一人でやたら美味しく感じます)。
・根来寺根来塗は使えば使うほど味が出る
通常の漆器はつやがあり、滑らかな手触りのものが多いです。
根来塗は最初つやはなく、むしろ荒い手触りでざらざらしています。
漆を刷毛で厚く塗っており、その刷毛跡が荒い手触りを生み出しています。
刷毛跡も味の一つで職人によって塗り方もかなり違っています。
使い込むことで摩耗が進み、ツヤが出て手触りもツルツルとなってくる。朱色がすり減り、下地の黒が「かすれ」として現われ、それが景色となり見所に。
漆器は洗えば洗うほど痛むイメージであるが、根来塗はむしろ味が出るので、気軽に洗えます。
根来塗の特徴である堅牢製、使えば使うほど味が出るところなど、とことん普段使いが想定されており、その工芸品としてのプロダクトデザインは、非常に洗練されています。
根来字根来塗は現状は販売が展示会のみのようです。
職人さんの人当たりもよく、展示も充実していますので、気になりましたら是非一度。