1,陶枕とは何か
陶枕は書いて字の通り陶器製、磁器製の枕のことを指します。
角形、丸型、方形などバリエーションに富んだ形をしており、内部に空洞があり、頭を冷やすのに適していました。
焼物の窯詰の時に使う陶器の焼台として下に置くものもトチンと呼ぶことがありますが、これは元々は、実用品として使われた陶枕からきたと言われています。
陶器でも磁器でも陶枕と言い、中国の唐代頃から作られ始めました。
陶枕はその材質からひんやりとして硬く、日本では主に夏場に好んで昼寝などに使われたようです。
竜や虎、唐獅子などの強い動物や縁起の良い図柄などのデザインがあり、芸術的な面でも評価されています。
2, 日本への伝来と普及
古くは中国の唐代から作られており、日本には唐三彩などの様式の陶枕が伝来しています。
生活に使う実用品でしたが、副葬品として使われることもあるなどと広い用途を持っていました。
中国から日本に伝来しましたが、一部の上流階級が使うに留まり一般に広まることはありませんでした。
また江戸・明治の頃に日本で作られていましたが、これも一部の愛好者が夏場に涼をとるのに使われたりしましたが、一般に普及することはありませんでした。
昭和初期に一時期流行しますが、通常の枕と比べて硬く、眠りにくいことや、安価で大量生産ができる枕にシェアを奪われるなどして普及するということはなかったと推測されます。
一時の流行があっても日本で普及することがなかった陶枕ですが、現代でも一部の産地で生産されています。
3、陶枕の用途
陶枕は中国では、夏場にその素材の冷涼感から昼寝用に使われたり、縁起の良い図柄や長寿を願ったもの、魔除けとして扱われたりしました。
中国唐代の「邯鄲の夢」という有名な故事の中でも見たい夢を見るために枕が使われており、自分の望む夢を見るためにも使われたのではないかと考えられます。
日本でも夏場に冷感枕として使われましたが、昭和初期に流行した時は主に健康器具という側面が強かったようです。
昭和初期当時には、肩こりや、高血圧に効く枕として様々な宣伝広告が打たれています。
「厚生枕」という商品も販売されており、陶枕の内部の中空部分が発香装置として使われており、付属の発香用の液によって快眠、鎮静効果などがあると宣伝されています。
また、『上林暁全集4』の「家郷」という小説にも血圧に良いという記述があり、一般的な認識は健康器具であったようです。
おわりに
日本では陶枕が普及することは遂にありませんでした。
しかし、昭和初期の一時的にとはいえ流行することがあったことからも、そのポテンシャルはまだまだ残っているのかもしれません。
当時は健康器具という側面が主な流行の要因であったと思われますが、これからまた新し用途が見つかるかもしれません。
古くからある物ではありますが現代にあった新しい使用方法が見つかれば、また違う流行が起きることもあるかもしれません。
そういう物についてのアイデアを膨らませていくのも面白いかもしれませんね。