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色絵磁器が日本に根付いた理由とその魅力

はじめに

今の時代にカップやお皿に絵付けがされているのは珍しくはありません。

大量生産のプラスチック製のものにも当たり前のように何らかの模様やキャラクターが描かれるないし印刷されています。

日本において磁器の色絵付けの技術によって色の表現の幅が一気にひろがったのは、江戸時代初めの頃です。

個人的には思ったよりも最近のことのような気がします。

その時代までは、色絵の技術がなく、輸入物の色絵磁器や鉄絵に絵画的な装飾がされた陶磁器が主流でした。

今では当たり前のようにある色絵付けはどのように日本に根付いたのでしょうか。

1,日本の色絵磁器の誕生

日本において磁器色絵が誕生したのが江戸時代の初め頃に有田で赤絵(色絵9)の焼物を作るのに成功したのが始まりと言われています。

それまでにも中国からやってきた、宋赤絵や明赤絵など見本となるものがあり、また朝鮮人陶工による有田での磁器作りの成功など色絵磁器の技術が生まれる素地は整っていたようです。

この当時の有名な日本の色絵磁器には現在でも有名な有田焼、鍋島焼、九谷焼(江戸初期に開窯しますが、数十年で一度途絶えます)などがあります。

磁器は江戸時代後期になると全国で生産量が増加し、庶民の間にも広がっていきます。

2,色絵磁器の変遷

色絵磁器は焼き始められた当初は、一般庶民には高嶺の花であり、限られた貴族や武士などの上流階級への流通が主で、その技術が大きく広がることはありませんでした。

当時の中国は王朝が明王朝から清王朝への交代があった動乱期で磁器の出荷が出来ず、代わりに日本の伊万里焼(有田の伊万里港から集荷されたことに由来する)が海外進出するなどしていましたが、あくまで貿易用であり、庶民にひろがることはありませんでした。

18世紀後半頃に当時の中国の国情の安定などにより、海外の日本の磁器市場が衰退すると同時に主に九州で焼かれていた磁器の技術が東日本のほうへ伝わり、国内市場の流通が増加しました。

江戸時代は比較的安定した時代で、河川や会場での輸送など物流網も発達しており、物や文化の広がりも早かったと思われます。

それらの要因もあって庶民にまで安価な磁器が普及し、色絵磁器も一般的なものとなっていきました。

色絵には様々なモチーフがあり、海外輸出向けの唐子柄や中国風の山水画、日本の花鳥、植物などがあります。

装飾技術も多く生まれ、五彩や金襴手、染付などで磁器は様々な絵付けの豪華なものや、絵画調のシンプルなものなど、多くのデザインと工夫で彩られていきます。

3,色絵の鑑賞とその効果

陶磁器の器は、飲食物であれ、植物であれ、なにかを入れるということが主な機能であり、装飾としての絵付けなどはその機能とはあまり関係がないように思われます。

効率性や合理性が重視される現代では最低限の機能を果たしてくれればいいという意見も多いのではないでしょうか。

しかし、実際には伝統的な花鳥風月、縁起物や、アニメなどのキャラクターのコラボ商品など様々なデザインや柄のモノがあります。

それがなぜかと言うと、それらのデザインや柄がそのモノを選ぶ理由になるからです。

当たり前のことと言われるかもしれませんが、考えてみると不思議な気がします。

必要最低限な機能を持っているだけではなぜいけないのでしょうか。

それは、人は機能と同時に自身の心を動かすものを求めるからであると思います。

芸術は人の心を動かすことで価値が見出されます、陶磁器などの工芸品にもその側面があります。

同じ日々使用するなら、少しでも自分の心を動かしてくれそうなものにより価値を見出すということは、自然なことであると思います。

絵付けは、茶道流行時の器の歪みやシンプルで素朴な印象などを重視する、侘び寂びデザインとも言える、観念的で一般には解り難いものではなく、絵という形である明確性を与えました。

何故自分はこのデザインが好きなのかの理由付けが解りやすくなったのです。

その解りやすさが一般にも受け入れられ、絵付けのデザインは定着していったと思われます。

一部のわかる人にだけわかるという狭いデザインの枠から、より自由なものになったとも言えます。

おわりに

絵付けなどのデザインは様々であり、その楽しみ方も人それぞれ、まったく同じということはまず無いでしょう。

これらのデザインは作り手はもちろんのこと、受け手の受け取り方次第で、驚くほどに多様な価値を表します。

絵や模様などのわかりやすいデザインだけでなく、形やその線、それの持つ歴史も含めて、一つのデザインと言えると思います。

陶磁器だけでなく、他の工芸品や色々なモノの持つデザインをじっくりと鑑賞することで、手に入れた当初とはまた違った価値が見えるかもしれません。

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