はじめに
猫と人間のかかわりの始まりは約9500年前の中東付近で始まったといわれています。
キプロス島において、9500年前頃のお墓にネコ科の動物が人間と一緒に埋葬されていたのが発見されています。
世界中で連綿と続く、猫と人との関係は時代によって変遷してきました。
その中で日本においての猫と人との関係を工芸品を通して見てみたいと思います。
日本の猫の歴史
日本に猫がやって来たのは、奈良・平安期と言われていましたが、弥生時代にはイエネコと思われる骨が出土しています。最初にやって来た当時は穀物をネズミから守るための家畜であったとも考えられます。
時代が変わって平安時代頃になるとペット化し、主に高貴な身分の人々に飼われていました。
この頃の猫は今とは違い、首に紐をつけられており、放し飼いはされていませんでした。
猫の扱いが変わる契機は江戸時代のはじめ、ネズミの害への対策のために、徳川家康の江戸時代はじめ(1602年)に京都所司代から出された「猫の放し飼い令」。
この法令によって猫をつないでおくことは禁止され、売買も禁止されました(禁止されていましたが実際には売買はされていたようです)。
食料や絹糸を生み出す蚕をネズミから守るため、猫は庶民にも重宝がられました。
当初は数が少なく、そのため猫の絵を描いてもらって、まじない絵として飾る家もありました。
現代は猫は主にペットとして扱われており、その人気から様々なグッズやデザインに採用されています。
日本において猫と人のかかわりは長く続いてきましたが、様々な時代において愛される存在であったようです。
猫と工芸品
時代時代で愛されてきた猫ですが、様々な工芸品になっています。
代表的なものはやはり招き猫でしょう。
招き猫は金運アップや良縁、厄除けなどの縁起物で、瀬戸・常滑・九谷が陶磁器の招き猫としては有名です。
由来も諸説ありますが、代表的なものに豪徳寺の招き猫と浅草の今戸焼の話があります。
豪徳寺の話は、彦根藩主の井伊直孝が猫に手招きされたことで、雨や雷から逃れられたというものです。
浅草の今戸焼の話は、老婆が貧しさから手放した猫が夢枕に立ち、「自分の姿を人形にすれば福が来る」と言われ、その通りに人形を作れば大ヒットしたという話です。
こちら二つに共通して言えることは、共に猫がきっかけで幸運を掴んでいるといういことです。
食を守り、絹を守った猫は、幸運と富貴の象徴として愛されていたのでしょう。
このような縁起物の工芸品となるのも自然な話であると思います。
猫のための工芸品も存在します。
猫ちぐらという工芸品で、「ちぐら」は子守のためのゆりかごのことです。
新潟県の関川村で作られるものが有名です。
藁で編まれており、保温性が高く、通気性もあります。
夏は涼しく、冬は暖かいという猫には嬉しい住まいです。
猫ちぐらは人の猫への愛情があらわれているような工芸品であると思います。
おわりに
猫と人の関係は長く、その過程で色々な文化や物が生まれてきました。
時代時代で変わる猫と人の関係ですが、今は平安時代に近いのかもしれません。
伝統工芸品の中でも招き猫はまだまだ現役です。
猫ちぐらも人気の高い商品です。
これからも新しい猫に関係する工芸品が出てきてくれることを期待しています。